こんにちは、あいです。
伊勢市から南西へ車で40分ほど、大紀町(たいきちょう)の深い森のなかにひっそりと鎮まる別宮があります。皇大神宮(内宮)の別宮「瀧原宮(たきはらのみや)」。神宮司庁公式サイトでも「遥宮(とおのみや)」と呼ばれている、街なかから少し離れた古いお宮です。
おじいちゃんに最初に連れて行ってもらったのは、小学生の終わりの秋の朝でした。「内宮や外宮を歩いてから、瀧原宮の参道を歩くと、伊勢のお宮の奥行きがやっと分かるよ」と言われたのを、今でもよく覚えています。

今日は、瀧原宮への参道を歩くときの地元の感覚を、在住者目線でまとめてみました。
瀧原宮ってどんなお宮?
神宮司庁公式サイト(isejingu.or.jp)によると、瀧原宮は皇大神宮の別宮で、天照大御神の御魂をお祀りしているとされています。境内には四つのお宮が鎮まっていて、参拝の順序もきちんと案内されています。
- 瀧原宮(たきはらのみや)
- 瀧原並宮(たきはらならびのみや)
- 若宮神社(わかみやじんじゃ)
- 長由介神社(ながゆけじんじゃ ※川島神社を同座)
このうち皇大神宮の別宮にあたるのが瀧原宮と瀧原並宮、所管社が若宮神社と長由介神社です(神宮司庁公式の案内による)。
「遥宮」と呼ばれる理由
伊勢市内の内宮・外宮から距離が離れているため、瀧原宮と志摩市の伊雑宮(いざわのみや)は古くから「遥宮」と呼ばれてきました。
倭姫命(やまとひめのみこと)が天照大御神の鎮まる地を求めて諸国を巡られた「御杖代(みつえしろ)」の伝承では、瀧原の地が一時的に大神の鎮まる場所として選ばれた、と語り伝えられています。神宮司庁公式の解説でも、瀧原宮を倭姫命の巡幸ゆかりの地として紹介しています。
ただ、伝承には複数の解釈があるので、断定的な歴史叙述は避けたほうがよさそう、というのがおじいちゃんの口ぐせです。
参道を歩くときの感覚
瀧原宮の参道は、駐車場から本殿まで片道およそ600メートル。両脇にはまっすぐ伸びた杉が空を覆って、足元には玉砂利が敷かれています。
参道の途中には、頓登川(とんとがわ)に下りる小径があって、ここで身を清める「禊(みそぎ)」が行われていたとされる場所が、今も「御手洗場(みたらしば)」として残っています。内宮の五十鈴川での御手洗とはまた少し趣が違って、川の音が間近で聞こえる場所です。
杉並木の参道はゆっくり歩いて片道15分ほど。光が斜めに差し込む朝の時間帯がいちばんきれいで、地元の方には朝の散歩がてら歩く人も少なくありません。
四宮を巡る参拝順序
瀧原宮の境内にも参拝順を示す立て札があるので、現地ではまずそれを確かめるのが安心です。一般的に案内されている順序は次のとおり。
- 瀧原宮
- 瀧原並宮
- 若宮神社
- 長由介神社(川島神社同座)
四宮が一直線に並んでいるわけではなく、社殿は地形に沿って配置されています。あたしも初めて行ったとき、どこから手を合わせればいいか迷ってしまって、おじいちゃんに「分からなくなったら立て札を見ればいいんだよ」と教えてもらいました。
参拝の作法は内宮・外宮と同じく「二拝二拍手一拝」。基本的な作法については内宮(皇大神宮)の参拝順序と作法の記事にまとめているので、合わせて読んでもらえると嬉しいです。
アクセス ― 車と電車、それぞれの感覚
車でのアクセス
伊勢市内から紀勢自動車道を使うと、大宮大台インターチェンジで降りて約10分。所要時間はおよそ40〜50分です。駐車場は敷地の入口付近に整備されていて、利用は無料(2026年6月時点)。
道中、紀勢自動車道は山あいを抜けるルートになっていて、季節によっては朝に霧が出ることもあるので、早めに出発するときは速度に気をつけたいところ。
電車でのアクセス
JR紀勢本線「滝原駅」からは、徒歩でおよそ20分前後。駅前から国道42号沿いに歩いていくと、瀧原宮の案内看板が見えてきます。
ただ、紀勢本線は本数が限られているので、行きと帰りの時刻表は必ず事前にJR東海公式サイトで確認しておくほうが安心です。あたしは一度、帰りの電車を見落として、駅で1時間以上待つはめになったことがあって…。

「事前に時刻表を見なさいって言ったろ」と、後でおじいちゃんに笑われたエピソードです。
雨の日と、歩きやすい靴
瀧原宮の参道は、雨が降ると玉砂利の上に小さな水たまりができて、街なかのお宮よりも少し歩きにくくなります。スニーカーや軽い登山靴のような、足元のしっかりした靴が無難です。
杉並木の参道は雨の日のほうが空気がしっとりして、それはそれで美しいんだけど、写真を撮るならカメラやスマホの防水対策はぜひ。
冬は伊勢市内よりも気温が下がりやすく、朝は霜が降りていることもあります。冬用のしっかりした靴下と、薄手のダウンくらいまで備えると安心です。
おじいちゃんと歩いた、ある秋の朝
去年の10月の終わり、神嘗祭(かんなめさい)の余韻がまだ残るころ、おじいちゃんと瀧原宮を歩いたときのこと。
朝6時すぎに伊勢を出て、紀勢自動車道を抜けて瀧原宮に着いたのは7時前。早朝の参道はほとんど誰もいなくて、杉並木の間から差し込む朝の光が、玉砂利の上に縞模様を落としていました。
「ここはな、あいが大きくなって伊勢を離れることがあっても、たまに帰ってきて歩くといい場所なんだよ」
おじいちゃんがそんなことをぽつりと言って、四宮を順にゆっくり参拝していました。あたしは答えに困って、ただ並んで手を合わせていました。

参拝のあと、頓登川のほとりにしゃがんで水の音をしばらく聞いて、帰りの車で結局寝てしまったのは内緒です。
まとめ ― 「遥宮」だからこそ、何度でも
瀧原宮は、内宮や外宮ほど人が多くなく、街なかから少し離れた場所にある別宮です。だからこそ、伊勢の中心の喧騒を抜けて、深い森の参道を歩くことそのものが、参拝のひとつの形になっています。
訪問者の方には、内宮・外宮を歩いたあとに、一日かけて瀧原宮まで足を延ばす旅程をおすすめしたい。在住者の方には、季節を変えて何度も訪れる「遥宮」として、日常のなかにそっと組み込んでもらえたら嬉しいです。
第63回神宮式年遷宮の8年間も、瀧原宮の杉並木と頓登川の水音は、変わらずそこにあります。あたしも、また季節を変えて歩きにいきます。