こんにちは、あいです。
伊勢に住んでいて、いいなぁと思うことのひとつが、神宮の御料地 (ごりょうち) のすぐ近くを散歩できることです。御料地って、観光で来た人にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。でも、これが式年遷宮にものすごく深く関わっている森なんです。
今日は、おじいちゃんに教えてもらった「在住者の歩き方」として、わたしが普段歩いている御料地まわりの散歩コースを、3 本くらい記録してみますね。観光案内ではないので、有名どころの紹介はちょっと控えめです。

御料地ってなに?
おじいちゃんがまず教えてくれたのが、御料地 (神宮宮域林) の意味でした。
神宮が所有・管理している森林のことで、内宮の周辺、五十鈴川の上流域を中心に広がっています。神宮司庁の公式案内によると、面積はおよそ 5,500 ヘクタール。東京ドーム何個分、と言われてもピンとこないくらい広いです。
なぜこんなに広い森を持っているかというと、式年遷宮で使う檜 (ひのき) をここで育てているからなんだそうです。20 年ごとの建て替えに必要な大きな檜は、樹齢 200 年以上のものも使われる。今わたしが歩いている森の木が、何代も先のお宮の柱になる予定で植えられている、と思うと、ちょっと不思議な気持ちになります。
おじいちゃんが「神宮の森は、200 年スパンで設計されているんだよ」って言ってたのが、印象に残っています。式年遷宮の話を 第 63 回神宮式年遷宮の概要 で書いたんですけど、その背景にこの森があるんです。
在住者として歩くコース
ここから、わたしが時々歩いているコースを記録します。御料地そのものの奥には立入禁止のところが多いので、あくまで「周辺」の道です。
コース1: 五十鈴川沿いの早朝散歩 (約 30 分)
朝の 6 時台に内宮へ向かって歩くと、五十鈴川沿いの遊歩道がすごく静かです。観光バスがまだ来ない時間帯で、近所のおじさん・おばさんが犬と散歩していたり、近くのお仕事の人がジョギングしていたり。
宇治橋の手前のあたりから、川沿いに少し上流へ歩くと、川の向こうに濃い緑の山並みが見えてきます。あれが宮域林の縁です。中に入ることはできないので、外から眺めるだけ。
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出典: Daderot, Wikimedia Commons / CC0
おじいちゃんは「川の音が、森の地下水のリズムだから、ぼーっと聞いているとよく寝られる」と言って、夏は縁台にちょっと寄ってお水を飲んだりしていました。
コース2: 宇治橋から神宮神田まわりへ (約 1 時間)
もう少し歩きたい日は、内宮の宇治橋を北側に渡ったあと、川下のほうへ抜けて、神宮神田 (じんぐうしんでん) のほうへ向かうコースを歩きます。神宮神田は、神様にお供えするお米を育てる神宮の御田。
田んぼと低い山並みが交互に見えて、季節がよく分かります。6 月のいま頃は、田植えが済んだあとの水鏡みたいな田んぼに、宮域林の山が映ってきれいです。
おじいちゃんとここを歩いたとき、「神宮の森と田んぼは、ぜんぶつながっている設計なんだ」と言われました。森から流れてくる水、その水で育つお米、そのお米を神様にお供えする祭儀 (神嘗祭 のあれです)。コースとして歩くだけでも、なんとなくその循環が肌で分かるような気がします。
コース3: 倭姫宮 (やまとひめのみや) 方面の高台から眺める
3 つめのコースは、御料地そのものではなく、外から眺めるコースです。倭姫前という交差点の近くに、神宮徴古館・神宮農業館があって、そのあたりから内宮方面の森が遠望できます。
そんなに歩かなくていいので、ちょっと疲れている日でも気持ちよく行けます。徴古館の前のベンチに座って、ぼーっと森のほうを眺めるだけでも、けっこう癒されるんですよ。

おじいちゃんと歩いた、春の朝のこと
ちょっと話がそれちゃうんですけど、忘れたくない一日があります。
春のはじめ、まだ寒い 3 月の朝、おじいちゃんと宇治橋から五十鈴川を上流側へ少し歩いたんです。霜柱がじゃりじゃり鳴る道を、ふたりで黙って歩いていました。
途中、おじいちゃんが立ち止まって「ここの木は、たぶん百年は超えてる」と言って、川向こうの山を指差したんです。わたしは「百年って、どうやって分かるの?」って聞いたら、「葉のつき方と、幹の根元の張り方」って、ちょっと自慢げに教えてくれました。
そのとき、ふと「いま私が見ているこの木が、もし御料地のお宮用の木だったら、わたしが死ぬよりずっとあとの遷宮で使われるんだなぁ」と思って、なんだか時間の感覚がへんになったのを覚えています。

おじいちゃんは「だから、神宮の森を歩くと、自分の寿命をちょっと忘れられる」って笑っていました。
歩くときの注意 (在住者目線)
最後に、御料地周辺を歩くときに気をつけていることを、メモ程度に。
- 立入禁止エリアに踏み込まない: 御料地の内部は神宮の管理林です。ふつうの登山道ではないので、「奥が気になる」と言って柵の向こうに入ったりはしないでください
- 早朝・夕方は本当に静か: 観光のメイン時間帯を外すと、宮域林の縁はびっくりするほど静かです。スピーカーから音楽を流したりするのはやめておきたい雰囲気です
- 車での乗り入れに注意: 内宮駐車場は時間帯によってすごく混みます。地元の人は少し離れたところから歩く人も多いです (詳しくは 車で行く伊勢の駐車と渋滞 のほうにまとめました)
- 季節の服装: 川沿いは夏でも朝はひんやり、冬は風が強いです。一枚羽織れるものがあると安心
まとめ
御料地は「観光地」というよりは、伊勢の人にとっては「いつもそこにある森」みたいな存在です。直接立ち入れる範囲は限られていますけど、川沿いや田んぼまわりから眺めるだけでも、20 年ごとの遷宮を支えている時間の長さが、少しだけ実感できる気がします。
伊勢に住んでいる人にとっては、たぶん「散歩コース」って意識して歩いたことすらない道かもしれません。だからこそ、こうして文字に残しておきたいなぁと思って、今日の記録にしてみました。
おじいちゃんの「神宮の森を歩くと、自分の寿命を忘れられる」という言葉、これはちょっと、わたしのお気に入りになりました。
それじゃ、また次の記事で。